鍼灸師が鍼灸を止める時 [日記]

もし、自分が寝たきりになって、リハビリが必要になったら
誰に頼もうか…
実感の湧かない心配に対しては具体的な考えも及ばない気がする



色んな意味で
鍼灸師という肩書きが面倒になっていた



寝たきりを予防するために
運動を実施する
体位変換することだって、立派なリハビリで
それが出来るかどうかでも、違いが出てくる

ある患者さんが
訪問リハを止めた
代わりにデイサービスに通うことになった
鍼灸の往療は継続している

自分が思うような結果を出したい患者さんと
それに応えられない事業所
能力の問題ではなく
仕組みの問題であり
このあたりは解決できない部分なのだろう

一時期
リハビリと言えば、マッサージと言う患者さんの言っている事が理解できなかった
マッサージ=リハビリだと思っている患者さんは多い
逆に言えば
リハビリ=運動療法・訓練という図式が頑なに頭から離れなかった僕自身もそこに在ったし
今でも、その考え方は間違っていないと思う

マッサージしても歩けるようにはならない
率直に言えばそういうことだ

絶対的な筋力不足の患者さんに対して
鍼灸師として鍼一本で、歩けるように(つまり筋力がアップするように)出来ないものかと思案していた
物質的な、筋肉というものの質量に対して着目しておれば
鍼をしたからと言って、筋力がアップするとは到底思えない

結局…この2、3年は
そのことばかり考えていて
成果は出なかったと思う
やっぱり運動は必要
そういう結論に至っていた

そんなジレンマを抱えたまましていた運動療法というのは
矢張り結果がついて来なかった
実際には、結果が見られたものもあったが
納得行くレベルには達していなかったと思う
自分の中で
鍼灸師という足枷が強く残っていたからだと思う

鍼灸に頼らないと言う宣言は
鍼灸師の自分に対する敗北宣言に等しい

鍼灸というのは
一つのツールであって
僕の存在自身ではない

鍼灸師という仕事を選んだ時点で
それなりに、プライドを持ってきたから
それを手放すのは、自分の存在を認めないのと同じぐらい辛い事だと思っていた

一定レベルの知識技術を習得した鍼灸師が
その鍼灸から一時的に離れるというのは良いのかもしれない
しかし、(自分自身のスキルに対して)まだ少しも満足出来ていない状況で
止めてしまうのは
会社が気に入らないから、辞めたいと言うような
如何にも子供っぽい言い訳にならないかと、それが不安だった

でも思い切って
鍼灸治療という選択肢を捨ててみた
そうする事で楽になる事は推測できていたが
思った以上に楽だった
というより、患者さんの治癒経過が格段に早くなった

鍼灸をしないから、そういう経過を辿ったというのではなくて
鍼灸を頭から切り離したという、覚悟の問題だったように思う

未練とか後ろめたさとか
そういう後悔の念があっては
何をやっても上手くいかない

話は戻るが
マッサージをしても治らないというのは撤回する
治らないと思ってやっても、本当に治らないというのが現実なのであって
寝たきりの患者さんをマッサージだけでも歩けるように出来るケースは多分にある
そういうところには、ブレない信念が必要なんだろう

鍼灸は面白い
鍼灸はこうあるべきだという固執が、その可能性を大きく削いでいたんだろう
近くに寄り過ぎて、見えなくなっていた気分だ
一度手放して、遠目から眺めてみたら
これほど良い治療方法はないと改めて思った

そして、鍼灸は
自分の発想と能力を発揮するための一手段という以外
それ以上の価値はないのだと思う

止める必要はなくなった
タグ:鍼灸
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